日本とドイツの教育機関において指導歴通算25年、そして東大生を育てた東大ママのruameiが、幼児期に最も大切な「読み聞かせ」についてお話しします。
幼児期に最も大切な働きかけは?
幼児期の最も大切な働きかけは何ですか。
本を読んであげることです
幼児期の最も大切な働きかけを問われたら、迷わず「子どもに絵本を読んであげること」と答えます。言語能力を育てるのに一番大切なことは、幼児がどれほど豊かな言葉を聞いて育つかという点です。読書力の基礎を作るのも、この耳からの豊かな言葉の経験であって、早くから字を覚えさせて読ませることではないのです。
幼い子は、周りの大人との対話や体験から言葉を習得していきます。言葉の意味を教えなくても、赤いチューリップを見て「赤いチューリップが咲いているね。きれいだね。」というお母さんの発話から、チューリップという花の名前や赤がどんな色なのかを学びます。また、「きれいだね。」という時のお母さんの表情などから、「きれい」が、プラスの感情を表すもの、美しいものを見たときに使うものなのだとインプットしていくのです。このように、体験から覚えた言葉は、子ども達の体にしっかり記憶されていきますが、限られた時間の中で、体験できることには限界があります。そんなとき、実体験と同じように言葉を覚えられるのが、読書なのです。本の中には、さまざまな世界が広がっています。その中で、いろんな体験をさせてあげてください。そうすれば、子ども達は、どんどん言葉を吸収していくことができるでしょう。
本の世界に没頭させる
分からない言葉は、説明してあげた方がいいの?
必要ありません。
お母さんの中には、「子どもが理解していないかもしれない。」とか「本当にわかっているのかしら?」と言葉の説明を加えたり、話の内容について質問したりする人がいます。これでは、子ども達が本の世界を楽しむことができません。
読み聞かせのコツは、子ども達を絵本の世界に浸らせてあげること。そうすることで、絵本の中で疑似体験ができ、その体験を通して言葉を覚えていくのです。絵本を読み聞かせると、登場人物のリボンの色や、背景に描かれていた川に魚がいたことなど、大人が気が付かないようなことまでよく見ているな、と驚いたことがありませんか。これは、子ども達が如何に集中してお話を聞いていたかという証拠。大人が読むストーリーを全身で受け止め、本の世界に没頭しているのです。そんなときに、「通行人とは、道を通っている人のことよ。」などと説明を挟んだら、どうでしょう。せっかく本の世界にいた子ども達を現実に引き戻してしまいます。せっかくの集中力が途切れてしまうのです。言葉の意味が知りたいときは、子どもの方から尋ねてきますから、その時以外は言葉の説明は要りません。
いつから読み聞かせればいいの?
いつから読んであげればいいの?
1歳前からたくさん読んであげましょう。
子どもを読書好きに育てるならば、1歳になる前からたくさん絵本を読んであげましょう。幼い子は、新しい話を聞くよりも、自分の知っている話を聞くことを好みます。大人はすでに知っている内容を読んでもつまらないと感じますが、子どもは大人と違って、あらすじが自分の知っている通りになっていくことをおもしろいと感じるのです。だから、繰り返しを好む幼児期にお気に入りの本を何度も繰り返し読んであげましょう。20回でも50回でも、読んであげてください。子どもがすっかり話を覚え、口ずさむようになれば、読んでいるところを指さしながら読んであげるとよいでしょう。そうするうちに、教えなくても子ども達は文字を覚え、読めるようになっていきます。
イタリアの幼児教育者マリア・モンテッソーリによると、言葉の敏感期は6歳ごろまでと言われ、中でも読む力は、4歳がピーク(臨界期)と言われています。
敏感期とは、特定の能力を獲得するために、感受性が特に敏感に働く時期のこと。
言葉の敏感期をわかりやすく言い換えると、「言葉についてもっと知りたい!」と思う時期のこと。
この時期に意識していろんな言葉を使って対話をしたり、本を読み聞かせてあげることで、どんどん言葉を吸収していくことができます。敏感期には、少しの働きかけで最大の効果を得ることができるのです。言い換えると、敏感期を逃すと、その力を身につけるためには一層の努力が必要になります。敏感期を逃さないよう、ぜひ幼児期にたくさん本を読んであげてください。
一日どのぐらい読めばいいの?
一日にどのぐらい読めばいいの?
続けることが大切。5分でも10分でも時間を見つけて読んであげましょう。
七田式教育の提唱者である七田真氏の言葉に以下があります。
「一日30分の読み聞かせは、金の卵を産む鶏を育てる」
こころをそだてる七田式絵本
これは、読書好きな子どもに育てることは、「金の卵を産む鶏」に匹敵する創造的な頭を育てるという意味です。
働くお父さんやお母さんにとって、一日に30分も読み聞かせの時間を捻出することは、とても大変なことだと思います。けれども、敏感期に一日30分読むことで、小学校以降の学習負担が減るのであれば、この時期にがんばって時間を捻出した方が親子の負担は軽いとも言えます。
ドイツ生まれドイツ育ちの我が子らに関して言えば、長男(6歳~7歳)次男(4歳~5歳)の2年間は、毎日平均1時間ほど読み聞かせをしていました。30分しか読めない日もあれば、1時間半読んだ日もありました。1時間半読み続けても、子ども達の集中力は途切れることなく、「もう寝る時間だから。」と切り上げるまで、ずっと読んでほしいとせがまれていたものです。長男と次男を比べると、読む力のピーク(臨界期)に読み聞かせ量が多かった次男の方が効果は大きく、「ハリーポッター」のような長いストーリであっても、一言一句違わず覚えていたことには、驚かされました。三男に読み聞かせていた「ハリーポッター」を背中で聞いていた次男が、私の読み誤りを正したのです。「えっ。」と思って本文を見直すと、助詞に至るまで次男の指摘通り。「まさか、全文覚えているの?」とびっくりしたことを今でもよく覚えています。また、このころの読み聞かせ体験から得た力が、長男の東大合格に大きな影響を与えたことは言うまでもありません。
たくさん本を読んであげてくださいね。