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バイリンガルに育てるには、いつから英語を始めるべき?

バイリンガルのすすめ

英語はできるだけ早く始めた方がよいといわれています。けれども、0歳から始めたからと言って、必ずしもバイリンガルといえる英語力を身につけられるわけではありません12歳から始めてもバイリンガルになる子はいるし、むしろ海外においては、親の都合で0歳の時にドイツに来た子よりも12歳でドイツに来た子の方がバイリンガルになる可能性ははるかに高いです。

どのような環境下で日本語と英語を学ぶのかによって、「いつ」働きかければよいのかは異なります。また、「いつ始めるか」と同時に「どれだけバイリンガルに必要な環境を整えることができるか」そして、「その環境をどれだけ維持し続けられるか」も大切です。

この記事では、ドイツで我が子らを日独英のトリリンガルに育て、また日本語補習校講師として長年バイリンガル教育に従事してきたruameiが、「いつ」英語学習に取り組むとよいかをお話しします。

バイリンガルの定義と分類

バイリンガルと言っても、①「言葉の能力だけで分類した場合」②「文化の習得を伴う場合」では、その力や内容にばらつきがあります。さらには③「アイデンティティーとの関係」を忘れてはいけません。ですから、一言でバイリンガルを定義づけるのは難しいですが、ここでは、①「言葉の能力だけで分類した場合」を考え、2つの言語がネイティブレベルに達している場合をバイリンガルと定義します。

また、③国際結婚家庭などで生まれた時から同時に2つの言葉に触れて育つ場合と、両親ともに日本人で日本語を母語とする中、英語を育てていく場合とでは、言葉の発達や働きかけは異なります。ここでは、④の場合を想定してお話しします。

必要なのは、親の覚悟と強い意志

言葉を身につけさせる上で最も大切なことは、環境を整えること。英会話を習わせるといった英語教育を施すだけでなく、日本語同様、英語が自然に耳に入ってくる環境を整えることです。

親が子どもに母語である日本語を話し始めるのに、「3歳になったら、日本語を始めよう」とは考えません。子どもが生まれた瞬間から話しかけ、子どもはその日本語環境の中にいるから自然に母語としての日本語を覚えていくのです。

日本に住んでいる場合、子どもの日本語を育てていくのは簡単です。けれども、英語もネイティブなみに育てていこうと思ったら、時間とお金、そして親の労力が必要です。日本語に触れる機会と同様に、英語に触れる機会も作っていかなければなりませんから、子どもの英語にかける時間やお金のために犠牲にせねばならないことも出てきます。バイリンガルとして「話す・聞く・読む・書く」のすべての分野の力を両言語でしっかり伸ばすためには、子どもが成人するぐらいまでかかりますから、長期的視野に立って支援していく必要があります夫婦間のバイリンガル子育てに対する考えがそろっていなければ、継続していくのは難しいでしょう。

こうした子育てに対する考え方は、子どもが生まれる前から夫婦間で統一し、バイリンガル子育てができる環境を整えておくとよいと思います。バイリンガル子育てをする上で、最も大切で最も難しいのは、英語支援に対する考え方を統一し、英語環境を整える覚悟と強い意志をもって継続していくことにあるといえるでしょう。

0歳の英語の働きかけ

英語耳を育てる

赤ちゃんの言語習得に関する研究で知られるパトリシア・クール氏によると、6か月までの赤ちゃんはどの国の言葉であっても聞き分けることができると言います。その後、その力は衰えていき、1歳を過ぎるとそれまでに触れてきた言葉しか聞き分けられなくなっていきます

つまり、1歳になるまでに日本語と英語の両方を聞いていれば、両方の言語を聞き分ける聴力を身につけることができるのです。

私は大人になってから、ドイツ語と英語の学習を始めました。海外在住歴は27年となりましたが、いまだに英語の「R」と「L」の発音の違いには悩まされています。けれども、1歳になるまでの赤ちゃんに英語を聞かせるだけで、この発音の問題を解消し、正しい発音ができるようになるのです。なんともうらやましいものです。

日本語と英語を混ぜない

1歳までの赤ちゃんは、どんな言葉でも聞き分けることができます。言い換えれば、どの言葉が日本語で、どの言葉が英語であるかの区別がついていません。赤ちゃんがこの言葉を整理し、日本語と英語を区別して覚えるようになるには、日本語での働きかけと英語での働きかけを明確に区別することが大切です。国際家庭では一人一言語と言って、日本人親は日本語のみで話し、アメリカ人の親は英語のみで子どもと接するようにします。双方の親が日本人で、英語に自信がないという場合は、日本人親が日本語で語りかけ、英語の働きかけはCDや動画視聴などに頼ってもよいでしょう。もちろん、テレビなどの媒体を通さず、直接人間が語りかけることは言葉の習得に欠かせません。けれども、ネイティブスピーカーでない人が英語で話すときの弊害を考えれば、英語耳を育てるだけであれば、CDなどの音源を利用した方がよいと思います。

バイリンガル教育の権威である中島和子さんの著書「言葉と教育」にこのような例が紹介されています。

4歳児のマリちゃんは、母親が家で和文タイプのアルバイトで忙しく、家にいてもほとんど話しかけてもらえず、いつもテレビの前に座らされている。夕方、片言の日本語を話す日系カナダ人の父親がかえってきて、公園に連れ出してもらう。父親は三世で英語の方が強いが、母親のたっての願いで不得意な日本語でマリちゃんと話す。

4歳になったある日、筆者のところに電話がかかり、「英語とも日本語もわからないことばを話す日本人の子どもがいるが、日本語がどのくらいできるか調べてほしい」という依頼だった。マリちゃんが絵を指して言う言葉は、ほとんど理解できなかった。見当がついたのは「たごま(卵)」ぐらいで、なにかぶつぶつ言っているが、日本語とも英語とも判明しがたい。(中略)

もし、日系人の父親が自身のある英語で話しかけ、母親が日本語で子どもと対話をしていたら、日本語も英語もできる健康児に育っていたに違いない

中島和子「言葉と教育」

忠君(8歳)の場合:母親は大学教師で、子連れでカナダの大学で一年間研究することになりました。ぜひ子どもたちに英語力をつけて帰りたいと思い、現地校の先生の勧めもあって、家で母親自ら英語を使うことにしたのです。忠君も弟の孝君(7歳)も英語で何とか反応するようになったのですが、困ったことになったのです。母親の英語のなまりがそっくり身についてしまい、ネイティブには通じない英語だったのです。

中島和子「言葉と教育」

12歳からでは遅すぎる?

いつ第2言語を学ぶとよいかについて、いろんな研究がなされていますが、その結果は言語能力のどの部分に注目するかによってさまざまです。ここでは、2つの調査結果を例に挙げ、何歳が最も適しているのか、12歳から英語学習を始めるのでは遅すぎるのかをお話しします。

「言語習得の臨界期」ジョンソン&ニューポートの調査

下の表は、神経科学者のジョンソン&ニューポートによる第2言語の学習を始めた年齢と言語能力の相関性を表したグラフ。アメリカに移住した3歳から39歳までの中国人と韓国人を対象に調査したもの。ここでは、7歳までに第2言語の学習を始めた場合、ネイティブ相応のレベルに達することができるという結果が出ています。

Language Learning Following Immigration: Modeling Choices and Challengesより引用

「12歳から始めても遅くはない」中島和子氏の調査

一方、中島和子氏の調査結果が以下。トロント補習校に通う日本人の帰国子女を対象としたものですが、こちらもニューポート&ジョンソンの調査結果同様、いつ英語圏に入ったか、つまり英語を始めた時期が英語力に大きく影響しているといわれています。英語圏への入国時の年齢が「7~9歳」の子ども達が現地の子どもに追いつくまでにかかる年数が最も短くて約5年。次に「10~12歳」で約7年という結果が出ています。「3~6歳」も「10~12歳」と同様に約7年という結果。「3歳未満」では約10年かかっています。

入国時の年齢
(英語を始めた時期)

英語読解力が学年平均に
達するまでの年数
0~3歳10年
3~6歳7年
7~9歳5年
10~12歳7年
中島和子著「バイリンガル教育の方法」のグラフをもとに表を作成

つまり、0歳から始めたからと言って、英語が早く上達するということではなく、12歳から始めたからと言って英語学習に不利ということにはなりません。異なる2つの言語であっても、根底にあるルールは共通していて、どちらで学んでも転用できると言われています(カミンズの氷山説)。ですから、根底にある部分をどちらかの言語、つまり日本語でしっかりと身につけることが、英語の学習にも役に立つのです。

カミンズの氷山説についてはこちらから

日本語での読み書きの基礎を習得した「7~9歳」の子どもは、この根底部分を日本語で身につけていて、かつ外国語を大人のように文法から論理的に学習するのではなく、日本語に訳すことなく、英語を英語のまま吸収していくことができるため、英語の伸びが最も早かったといえます。それに対して、「6歳以下」では、会話の力は早く身につけることができるものの、日本語での読み書きを習得していないため、英語の読み書きの力を習得するにも時間がかかるのです。

2つの調査結果から分かること

これら2つの調査結果からわかることは以下です。

  • 7歳ごろに第2言語を学習すると高い英語力を身につけられる
  • 現地で毎日英語で授業を受けていても、習得までに5年ぐらいかかる
  • 母語の読み書きの力は、第2言語の習得に役立つ
  • 6歳以下の読み書きがまだ定着していない幼児においては、日本語学習を大切にする

日本に住んでいても、例えばインターナショナルの幼稚園や小学校に通う場合は、家庭で日本語を育ててあげねば、日本語での日常会話はできたとしても学習言語として相応の日本語力が育たない可能性があります。インターナショナルスクールへの入園入学時期を検討し、必要に応じて家庭でも日本語支援をするとよいでしょう。

日本の幼稚園小学校に通う場合は、日本語の習得面での問題はありませんから、0歳の時に英語耳を育てその後も積極的に英語環境を整えていくとよいでしょう。

最後に

いかがでしたでしょうか。

最後に、本記事で紹介した結果はあくまで研究や調査の結果であり、これが正解というわけではありません。大人になってから英語を学習してネイティブなみの発音でお話しされている人もたくさんいますし、帰国子女でも、英語を話せない人はたくさんいます。つまり、「バイリンガルに育てたい」と思ったときが最適なスタート地点なのです。そして、親が覚悟と強い意志を持ち、子どもの「バイリンガルになりたいという気持ち」を育て、環境を整えて続けてあげること。それができれば、お子さんは必ずバイリンガルに育ちます!

本記事では、「いつから英語を始めるか」についてお話ししてきました。次回は、具体的な英語支援の方法を紹介します。

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