日本語補習授業校とは?
日本語補習授業校(以下、補習校と記します。)とは、海外にある教育施設の一つ。多くの補習校が日本政府の支援を受け、海外の現地校やインターナショナルスクールに通う日本人の子ども達に対し、週に一度、土曜日や平日の放課後に授業を行っています。幼稚部から高校部まで設置している補習校もあれば、小学部と中学部のみという補習校もあります。多くの補習校では、現地で採用された講師が授業をしていますが、日本からの派遣教員がいる学校や校長だけ派遣されているという学校もあります。
日本人学校との違いは?
日本人学校も在外教育施設の一つですが、全日制であるところが補習校と大きく異なります。カリキュラムは日本と同じで、簡単に言えば、日本にある学校が海外に設置されていると考えてよいでしょう。文科省より日本国内の小学校、中学校、高等学校と同等の教育課程を行っているという認定を受けていて、日本人学校中等部を卒業することで、日本国内の高校の入学資格を得られ、日本人学校高等部を卒業することで、日本国内の大学への入学資格を得ることができます。
一方、補習校を卒業することで日本国内の学校への入学資格を得ることはできません。ただし、海外の学校を卒業したものとして、日本の学校の入学試験を受けることができます。
日本語補習校のカリキュラムは?
補習校では、日本国内で使用されている教科書を使って、国語を中心に授業を行っています。学校によって算数(数学)、社会などを提供しているところもあります。補習校の小学部や中学部に在籍している児童生徒は、補習校から管轄の領事館に教科書を申請してもらえるので、それを無償で受け取ることができます。これから海外に赴任する方は、海外子女財団にて海外で使用されている教科書(国内で使用していた教科書と出版社が異なる場合があります。)を受け取ってから出国されるとよいでしょう。教科書申請期間は年に2度しかありません。たとえ補習校に在籍していても、教科書申請期限を過ぎてから入学した場合は、個人で管轄の領事館に申請しなければなりません。海外赴任を予定している方や補習校の入学を検討されている方は、教科書申請についても事前に海外子女財団や補習校に確認しておきましょう。
補習校では、通常授業のほかに、伝統行事や季節に合わせた活動を取り入れています。お正月の餅つきや書初め、節分の豆まき、ひな祭りなど、現地の学校では体験できない日本の伝統行事のほか、運動会や遠足、林間学校などを実施している学校もあります。家庭の中だけでは伝えきれない日本の文化や行事に触れる機会があるのも日本語補習校の魅力の一つです。
日本語補習校に入学するには?
補習校は、現地の学校やインターナショナルスクールに通学中の日本人子女を対象としています。入学試験を設けている補習校もあれば、面接のみの学校もあります。また、体験入学をした後に、学力レベルにあったクラスに編入できる学校もあります。入学試験の内容や体験入学実施の有無などをホームページで確認しておきましょう。
授業料、その他
補習校の学費は、その国の物価や学校の規模、在籍児童生徒数によって異なります。けれども、日本政府の支援を受け、現地の日本人会や補習校に子ども達を通わせる保護者が主体となり、ボランティアで運営されているため、私立の学校などに比べて学費は低く設定されています。
授業料のほか、学校によっては、入学金や保護者会費、セキュリティー費などが必要な場合があります。
日本語授業校のメリット
海外で暮らす子どもにとって、日本語授業校に通うメリットはたくさんあります。
◆日本語の維持・向上
毎週日本語で勉強や会話をする時間を確保できるので、日本語の維持・向上にとても効果的です。読み書きの基礎が身につく小学校2年生くらいまでは、現地の言葉よりも母語である日本語教育を優先させた方が、日本語力だけでなく第二言語となる現地語(ドイツに住んでいるならば、ドイツ語)の発達にもよい影響を与えます。幼稚部を設置している補習校であれば、ぜひ幼稚部から入学させましょう。
◆日本の行事や学校文化を体験できる
授業以外でも、日本の学校行事や文化に触れられることも大きなメリットのひとつです。子ども達の楽しいという経験が日本語学習を継続する力に繋がります。
◆仲間ができる
同じ境遇や似た背景を持つ仲間の存在は心強いもの。同じように日本語の勉強を頑張っている仲間がいることで勉強への意欲も上がり、遊びながら自然に日本語を使う機会がぐっと増えます。特に、日本から転入してきたばかりの子どもにとって、言葉が通じない平日の現地校生活ではストレスを感じることが多く、日本語で分かりあえる友達と過ごす時間が精神的な支えになることもあります。また、子どもだけではなく、保護者間でも日本人と知り合い、情報共有できる貴重な場となっています。
◆日本語の価値を見出し、アイデンティティーを育成できる
子ども達は、自分達が住む社会において、その言葉がどのぐらい必要とされているか、価値があるかということで、日本語の価値を図ります。
ドイツの中では最も日本人在住者の多いデュッセルドルフ市には日本の会社がたくさんあり、日本人学校もあり、日本食材を扱う店や、日本食レストランが立ち並ぶエリアがあります。デュッセルドルフ市では、日本人に対して滞在ビザや労働ビザの発給条件が緩やかであったり、早急にビザが下りるといった待遇がなされ、社会全体の日本に対する認知度は非常に高いです。そうした都市に住む子ども達は、日本語の必要性や有用性を感じているため、海外といっても日本語を伸ばしやすい環境にあります。その一方で、日本人が一人も住んでいない、当然ながら現地校でも日本語を話す人や日本人が一人もいないといった環境では、子ども達は日本語の価値を見出すことが難しく、日本語の力を伸ばすにはかなりの努力が必要です。
そんな中、補習校に通うことで、子ども達は日本社会が存在し、自分がその社会の一員であることを実感することができます。そして、日本語学習への意欲を高め、日本人としてのアイデンティティーを育てていくことができるのです。