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元講師が語る「補習校の保護者あるある?!」

小学校・補習校教育

ここでは、補習校に子どもを通わせる保護者の中から、国際児(日本人親と非日本人親との子ども)や海外生まれ海外育ちの日本人子女をもつ保護者あるあるを紹介します。

保護者あるある①「補習校に入学したから、日本語が話せるようになる」

B子さん
B子さん

補習校に入学したから、息子は日本語を話せるようになりますよね!

ruamei
ruamei

なりません……。

補習校の国語の授業は、週にわずか2時間から4時間程度しかありません。例えば、私の勤務校は週に2コマしか授業をしていなかったので、授業時数は年間72時間です。一方、日本の子ども達は、一年間にどのぐらい授業を受けているのでしょうか。以下の表をご覧ください。

1年2年3年4年5年6年
国語306315245245175175
文科省「標準授業時数について」20210629-mxt_kyoiku01-000016453_4.pdf (mext.go.jp)


1年生の場合、教科書の年間標準指導時数は306時間、そのうち補習校で学習する時間は72時間。つまり、残りの234時間は、家庭で補わなければ国語の教科書学習を終えることはできないのです。さらには、国語の教科書を理解するためには、学年に応じた理科や社会などの知識が必要です。小5「天気を予想する」には、アメダスやら降水量、静止気象衛星といった言葉が満載。小6「百年後のふるさとを守る」では、江戸時代の終わり、安政元年に起きた地震が紹介されています。

表にある年間標準指導時数というのは、すべての教科を日本語で学習している子ども達が学習するために必要な時数。すなわち、国語以外の授業を外国語で受けている子ども達が理解するには、これ以上の時間や努力が必要ともいえるのです。

保護者あるある②「日本語とドイツ語の両方で話せば理解できるよね」

B子さん
B子さん

わからない言葉は、日本語の後にドイツ語で言い換えたり、説明したりしています。

ruamei
ruamei

そんなことをしたら、子どもは日本語を聞かなくなります。

分からない言葉をドイツ語で説明していたら、子どもは「どうせお母さんはこの後ドイツ語で説明してくれるから、日本語の部分は聞かなくていいや。」と考えるようになります。また、お母さんはドイツ語が分かる、お母さんはドイツ語を話してくれるという状況を作り出すと、子どもは必ず楽な方の言葉を使います。そうなると、なかなか日本語は育ちません。日本人家庭であれば、家では日本語を話すことをルールとして徹底させるとよいでしょう。国際家庭であれば、お父さんはドイツ語、お母さんは日本語というように言葉を使い分けてください。

ここで、アメリカのガーダーという人がカリフォルニアでスペイン系の子ども達を教えていた経験に基づいて作った「ゴールデン・ルール」を紹介します。ご家庭でのルール作りの参考にしてください。

ruamei
ruamei

ガーダーの「ゴールデンルール1~5」に6と7を加えています。

保護者あるある③「子どもは吸収が早いから、日本語もすぐ習得できるはず」

B子さん
B子さん

子どもは吸収が早いから、日本語もすぐできるようになりますよね?

ruamei
ruamei

その通りですが、日本語以上にドイツ語が入ってきたら、ドイツ語を覚えます。

確かに、子どもは大人よりも吸収が早いです。けれども、それは日本語に限らず、英語やドイツだって同じ。現地校で毎日ドイツ語のシャワーを浴びれば、あっという間にドイツ語がメインになり、日本語を話したがらなくなります。だれだって、容易に自己表現ができる方の言葉を使いますから。だからこそ、ドイツ語以上に日本語のシャワーを浴びせなければなりません。お父さんやお母さんは、ぜひおしゃべりになって、たくさん話しかけてください。

話し方のコツとして、「インリアル・アプローチ」を紹介します。

ruamei
ruamei

「インリアルアプローチ」とは、子どもとよりよいコミュニケーションをとることで、言葉を育てようという方法です。

保護者あるある④「私のいうことは分かっています!」

B子さん
B子さん

私のいうことは分かっています。だから、聞く力は問題ありません。

ruamei
ruamei

それって、どんな内容なの?いろんな話をしていますか?

家庭で使われる語彙は限られています。忙しい日など「早く起きなさい。」「忘れ物ない?」「歯を磨いた?」「いってらっしゃい。」「お帰り。」「学校どうだった?」「おやすみ。」だけで一日が済んでしまう時も?!一方、補習校で使う言葉は、学習のための言葉。日常生活では出てこないような言葉がたくさん使われています。

次の表は、元環太平洋大学短期大学部専任講師の奥村三菜子氏が今から20年ほど前にドイツの日本語補習授業校の保護者と講師に対して行った「子どもの日本語能力の優劣」に関する調査結果です。

*「位相」:敬語・友達言葉、話し言葉・書き言葉、男言葉・女言葉などの使い分け
出典:奥村三菜子氏「『子どもの日本語能力の優劣』に関する調査結果」

特筆すべきは、「語彙」のところ。保護者の約70%が「うちの子の語彙は優れている」、つまり豊富であると回答しているのに対し、補習校の講師で「優れている」と回答したのは、わずか5%のみ。95%の講師は、子ども達の語彙力に問題を感じているのです。家庭で使う言葉と学校で使われる言葉が異なるため当然の結果と言えますが、家族の対話においても意識して学習で使う言葉を増やしていかないと、教科書を理解することは難しいのです。

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