我が家には、子ども用の国語辞典が3冊あります。画像にある下が長男のもので、ベネッセの国語辞典。上が三男のもので小学館の国語辞典。次男のものは現在貸し出し中のため、手元にありません。
これらは、息子達が補習校の小学校時代に、1年生から使っていたもの。息子達が通う補習校では、小1から国語辞典を導入し、積極的に使用していくという方針だったため、3人ともこのような国語辞典になりました。長男のものは紙製で、背が何度も破れたため、補強して使っていました。
辞書引き学習の火付け役である深谷圭助先生が実践された辞書引き学習を、我が家や勤務校で導入してみると、それが海外の補習校であっても同じ現象と効果が!休み時間や放課後になっても、家に帰っても辞書を離さず、一日に200個も調べたという強者もいたほどです。
この記事では、海外の補習校でどのように辞書引き学習を取り入れたか、家庭ではどのように支援するとよいのか、についてお話しします。
子どもに辞書を選ばせよう
小学1年生というのは、これからの学校生活に大きな期待と希望を抱き、人生で一番やる気にあふれているとき。子ども達もそうですが、支援してくださる保護者の皆さんもそうです。また、小学生活の中で最も文字に対する感覚が鋭いときでもあります。
この機を逃さず、ぜひお子さんと一緒に書店に行って国語辞典を買ってください。海外にお住まいの方は、年長時に帰国されたときや、小1の夏休みなどに購入されるとよいと思います。自分で選んだ辞書ですから、買い与えられたものよりもずっと愛着がわきます。
購入する際に気を付けることは、次の3つ。現在売り出されている辞書は、この3つを満たしているでしょうから、お子さんが実際にページを繰ってみて、わかりやすいもの、好きだと思えるものを購入すればよいかと思います。
例えば、「サッカー」という言葉をいくつかの辞書で調べてみて、一番子どもがわかりやすいと思えるものを選ぶとよいでしょう。
買いに行くのが難しい方に、おすすめを2つ紹介します。
1)小学館の国語辞典は、子どもが大好きなドラえもんとオールカラーが魅力。1300点を超える豊富なカラー写真とイラストで分かりやすい。小学国語辞典売り上げ数1位(「Tonets-i」「CANTERA」「日教販」2023年調べ)
見出し語数 | 38,500語 |
総収録語数 | 46,400語 |
カラー | オールカラー |
大きさ | B6(12.8×18.2㎝) |
ページ数 | 1,426ページ |
特典 | 学年別漢字表ポスター |
編集 | 金田一京助、深谷圭助、飯田朝子、石黒圭、桂聖 |
コンパクトな「ドラえもん版」のほかに、A5サイズ「ワイド版(約1.2㎏)」もあります。
2)光村教育図書の国語辞典は、海外で使用されている国語の教科書を刊行しているだけあって、教科書に出てくる言葉がすべて収録されています。
見出し語数 | 38,500語 |
総収録語数 | 34,000語 |
カラー | 2色刷り |
大きさ | B6(13.8×19.3㎝) |
ページ数 | 1,333ページ |
特典 | 別冊「仲間の言葉ミニブック」 |
監修 | 甲斐睦朗 |
付箋を準備しよう
辞書と一緒に付箋も用意しましょう。付箋には大きく分けて、2つのタイプがあります。紙タイプとフィルムタイプです。
ここで紹介している「紙タイプの付箋」は、25mm×75mmの大きさがあり、低学年の子どもでもしっかりと付箋に書き込みができます。
・紙なので、低学年児に書きやすい。
・幅が広く低学年児にも付箋に書き込みがしやすい。
・付箋の厚みの分だけ辞書の厚みが増し、達成具合を容易に可視化できる。
・付箋が増えてくると重ねて貼らねばならず、付箋の下に書いてある字を読めない。
・辞書に書いてある字を読むために付箋をとっているうちに、付箋がはがれてしまう。
もう一つは、「フィルムふせん」。いろんなサイズがありますが、画像にあるものは紙より一回り小さく、10mm×44mm。低学年が書き込みをするには、やや細いです。ダイソーでは、13mm×44mmやワイド版25mm×44mmといったものもあります。
・半透明なので、付箋の下の字を読むことができる。
・粘着力が強く、はずれにくい。
・色が豊富なので、「あ行は赤、か行は黄」「品詞別」で色を変えるといったアレンジができる。
・幅が細く短いものは、低学年児にはやや書きづらい。
・紙の付箋より薄いので、付箋を貼ってもあまり厚くならず、達成感を得づらい。
・粘着力が強く、子ども自身で貼り間違えたものを外そうとすると辞書を破ってしまうときがある。
低学年ならば「紙のもの」、中学年以上なら「フィルム」と、お子さんの学年によって、使用する付箋を工夫してみてください。
付箋ポケットを作り、いつでも辞書が引けるようにしよう
おもて表紙の裏に付箋ポケットを作り、いつでも付箋が取り出せるようにしていました。クリアファイルを適当な大きさに切り、3辺をテープでとめただけのものです。学校で指導する際は、付箋を忘れる子がいるので、保護者の方にお願いして、あらかじめ付箋ポケットを作り付箋を入れておいてもらいました。
私が子どものときは、子どもの国語辞典といえば、一家に一冊のみで、使い回していました。ケースに入っていて、今でも原型をとどめています。けれども、深谷先生が著書の中で書かれている通り、辞書も道具の一つ。使ってこそ価値があるのです。子ども達がさっと手に取って辞書を引けるように、思い切ってケースもカバーも捨ててしまいましょう。そして、家ではリビングに辞書を置き、いつでも手が届く状態にしておくとよいです。
教室で使うときは、常に机の左上に出しておくことを習慣にしていました。
さあ、これで準備完了です。
辞書を引こう
辞書引きの目的
小学校1年生で辞書を使う目的は、「言葉の意味を調べる」ではありません。まずは、「辞書に親しむ」ことを目標として、辞書引きを導入しましょう。
もちろん文字がすらすら読めて、言葉の意味を調べられる人は、どんどん調べるとよいと思います。
見出し語のルールを知る
学校で辞書引きを最初に導入するとき、子ども達はとても誇らしげに辞書をもってきます。辞書が何なのかも知りませんが、新しく買ってもらったこと、お母さんに付箋ポケットを作ってもらったこと、付箋をもっていること、何もかもが初めてで誇らしいことなのです。
そこで、さっそく辞書を使ってもらいます。
- 「30ページを開いてください。どんな言葉が書いてありますか。」
→あまがえる、あまど、あまのじゃく・・・・・・(先生は板書) - 「では、75ページにはなんと書いてありますか。」
→いのこり、いのしし、いのちのおんじん・・・(先生は板書) - 「次は、とても難しい。超難問です。100ページにはなんと書いてありますか。」
→うでがあがる、うてる、うとうと・・・(先生は板書)
このように、ページ数を言ってページを開かせ、全員に何が書いてあるかを答えさせます。こうするだけで、教えなくても子ども達は見出し語が「あ→い→う」の順番に並んでいることに気づきます。3つ以上発表してもらい板書しておくと、見出し語が「あ→い→う」の順に並んでいることが分かりやすいです。
ここで、ダメ押しとして、次の指示と発問を。
4.「次は、もっと難しい。これは1年生はふつうはできませんよ。150ページには何が書いてありますか。」
→おばあさん、おはじき、帯グラフ・・・(先生は板書)
5.「じゃあ、120ページにはなんと書いてあるでしょうね。予想してみてください。」
6.「170ページには、どんな言葉が書いてあると思いますか。」
「あ→い→う」と引かせた後は、「え」ではなく「お」のページを引かせます。その後、「う」と「お」の間の120ページには、どんな言葉が書かれているのかを考えさせるのです。
黒板を見ても、誰も答えを思いつかないようならば、板書した「あまがえる」「あまど」「あまのじゃく」の「あ」の文字を〇で囲んでやります。同様に「いのこり」「いのしし」「いのちのおんじん」の「い」を囲んでやります。すると、子ども達は辞書の見出し語が「あ~ん」の順番に並んでいることに気づくことができます。
また、「120ページには、何から始まる言葉がくるでしょう?」と発問を変更してもよいでしょう。
付箋を貼ろう
辞書を引いたら付箋を貼らせましょう。貼るときのルールは次の2つ。
1)付箋に「通し番号」と「調べた言葉」を書く。 例)③サッカー
2)調べた言葉の意味を読み上げる。
通し番号は、その都度書くのではなく、あらかじめ付箋に書いておくとよいです。そうでなければ、自分がそれまでにいくつ調べたかを忘れてしまい、通し番号が分からなくなってしまいます。
お子さんの状況に合わせて、調べた言葉の意味は一緒に読んだり、読んであげたりしてもよいでしょう。
お子さんが意味を読んだら、「へえ、そうなんだ。お母さん、〇〇君に読んでもらって、すごくよくわかったわ。」といったプラスの声かけをして、お子さんの「読みたい!」という意欲を育てるのが大切。
辞書引きの導入や、やる気を高める働きかけ
一番長い言葉探し
「あ」から始まる言葉で、一番長い言葉探しバトルをします。制限時間を決め、時間内に最も文字数の多い言葉を見つけた人が勝ち。
あたまかくしてしりかくさず
あらぶしゅちょうこくれんぽう
ありのはいでるすきまもない
などが最も長いでしょうか。
ご家庭で取り組むならば、お母さんは大人の辞書、子どもは子ども用の辞書を使い、大人は制限時間を短くするなどで真剣勝負をするとよいかもしれません。
言葉探し
特定の言葉を探すのが難しいときは、文字数と頭文字を与えて、言葉を探してもらうとよいでしょう。
表を作成しなくても、「か」から始まる2文字の言葉を探そうと声をかけるとよいと思います。どんどん文字数を増やし、難易度を上げると、ゲームみたいで、子供たちのやる気も向上するかもしれません。
達成表
付箋同様、やったことが目に見えると、またやる気につながります。
そこで、このような達成表を用意し、付箋を10枚、20枚と貼るごとに達成日を書き込み、先生に見てもらいます。「先生から」の欄はお母さんのコメント欄にしたり、シールを貼ったりしてもよいと思います。
我が家では、リビングの壁に貼っていました。
学校に持たせる場合は、この達成表も忘れないよう、辞書のうら表紙の裏にマスキングテープで貼ったり、ポケットを作って入れておくとよいでしょう。名前欄も作ってください。
辞書に慣れてきたら、いよいよ言葉を調べてみよう
まずは、身近なもので子ども達が知っている言葉がよいでしょう。子どもの好きな食べ物、スポーツなど、興味が持てるものがいいですね。
辞書で調べる前に、辞書を作る人になって親子で意味を考えてみてもおもしろいと思います。
じゃあ、D男くんの好きな「トマト」を調べてみようか。なんて書いてあるかな。お母さんは、「夏の野菜で、丸くて赤い」と書いてあると思う。
でも、黄色いトマトも見たことがあるよ。大きいのも小さいのもある。
こういって意味を予想してから引くと、辞書の意味を読む意欲が高まります。
本当だ。D男君の言う通りだね。いろんな色があるんだね。植物の図鑑を見てみようか。
というように、一緒に図鑑を見たり、いろんな色のトマトを買って食べ比べてみたりと、辞書引きから更なる学びへと発展させることができます。。
一日10分の辞書引きを毎日の習慣にしよう
何事も習慣づけるには100日かかるといわれています。一日に10分でもよいので、親子で辞書を引く時間を作りましょう。そして、毎日続けてください。文字を読み始めたばかりの子ども達にとっては、辞書を調べて意味を読むことは、ハードルが高いもの。でも、おうちの人と辞書引きをして一緒に過ごす時間は大好きなのです。
辞書には大人も知らないことがたくさんつまっています。ですから、この10分は、ぜひ子ども達と一緒に辞書引きを楽しんでください。そして、辞書引きを習慣にしてください。