ドイツで生まれ育ったからこそ東大に合格できた
国際結婚などで海外に住んでいる方や、お子さんを補習校に通わせている方なら、海外に住む子ども達が日本語を身につけることが、如何に大変かをよくご存じでしょう。そして、ドイツに生まれ、ドイツに育った子どもが東大に行くなんて無理だと思われるかもしれません。
けれども、家庭で日本語さえしっかりと身につけさせることができれば、海外で生まれ育った子ども達の方が、東大や日本の難関大学に合格しやすいと言えるかもしれません。長男に関して言えば、ドイツ生まれドイツ育ちでなければ、東大に合格することはできなかったでしょう。長男は、東大に限らず、京都大学(二次試験日が東大と重なったため、一次のみ合格)、横浜国立大学、慶応大学にも合格しましたが、これらの大学に合格できたのも、ドイツに生まれドイツに育ったからと言えます。
この記事では、なぜ海外生まれの帰国子女が東大受験で有利なのか、その理由をお話しします。
帰国子女の大学入試
東大は、海外の高校を卒業した生徒に対し、「外国学校卒業学生特別選考」という選抜方法を設けていて、それには以下の2種類があります。
第1種 | 第2種 | |
---|---|---|
対象者 | 私費留学生 | 帰国生徒 |
資格 | 外国において、学校教育12年の課程の最終学校を修了した者及び修了見込みの者、又はこれに準ずる者で文部科学大臣の指定したものなど。 | 外国において、学校教育12年の課程の最終学校を修了した者及び修了見込みの者、又はこれに準ずる者で文部科学大臣の指定したものなど。 |
要件 | 日本国籍、もしくは永住許可を得ていないこと。 | 日本国籍、もしくは日本国の永住許可を得ていること。 |
募集人員 | 文科一類、二類、三類 各若干名 理科一類、二類、三類 各若干名 | 文科一類、二類、三類 各若干名 理科一類、二類、三類 各若干名 |
試験内容 | 小論文、面接 | 小論文、外国語、面接 *文系の場合のみ。 *理系は外国語の代わりに数・理の学力試験あり |
大きな違いは二つ。一つ目は、第1種は外国人を対象とした選抜制度で、第2種がいわゆる帰国生入試。ドイツ生まれドイツ育ちであっても、長男の場合は第2種を受験することになります。日本人なのだから当たり前と思われる方もいるでしょうが、たとえ国籍が日本であっても日本語支援を受けずにドイツで育てば、全く日本語を話さないドイツ人同様に育ちます。ルックスがどこから見ても100%ジャパニーズであっても!です。
二つ目の違いは、試験内容。外国人を対象とした第1種は小論文と面接のみですが、帰国生を対象とした第2種には、前述に加えて外国語があります。ここで、試験内容についてもう少し詳しく見てみましょう。
外国語の比重が高い試験内容
出願時の資料や詳しい試験内容は、別途異なるページで紹介予定ですが、帰国生入試の試験内容「小論文、外国語」について説明すると以下。ここでは、帰国生入試にのみ焦点を当てます。
小論文 | 外国語 |
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問題数は全2問。 第1問は日本語で解答。 第2問は次のいずれかの言語で解答する。 (英語、ドイツ語、フランス語、中国語、ロシア語、スペイン語、イタリア語、韓国朝鮮語、アラビア語) | 1 英語 2 ドイツ語 3 フランス語 4 中国語 のうち、1つ選ぶ。ただし、英語の選択者に限り、英語の問題の一部分に代えて、他の外国語(ドイツ語、フランス語、中国語、韓国朝鮮語)の中から一つの外国語を試験場において選択可。 |
表にあるように、ドイツ育ちの長男であれば、小論文も外国語もネイティブ言語であるドイツ語で受験が可能なのです。そして、この言語のみで言えば、全日制の日本人学校ではなく補習校に通っている子ども達の方が圧倒的に有利と言えます。
帰国生入試とは、大学が求める人材か否かを見極める試験
こうしてみてみると、日本人学校に通っている子ども達に比べて、補習校の子ども達の方が有利な点も多いことが分かります。補習校の強みを生かせば、海外で生まれ育った子ども達の日本の大学への進学率も大いに高まるでしょう。
長男は、大学の帰国生入試に2度挑戦しています。1年目は、北海道大学と東京大学を受験。この時は、理系の学部を志願しました。北海道大学は一次試験に通過したものの、二次で不合格。東大は一次ですらパスできませんでした。
そして、2年目。北海道大学、横浜国立大学、京都大学(一次のみ受験。二次試験は東大の二次と日程が重なったため断念。)、東京大学に加え、慶應義塾大学は2つの学部を受験しました。いずれも文系の学部です。結果は、北海道大学を除き、すべての大学に合格することができました。前述の通り、帰国生入試では、文系の多くの場合、小論文と外国語、そして二次の面接で合否が決められることが多いです。つまり、大学や担当試験官が欲しいと思える人材かどうかを小論文や面接でしっかりとアピールできれば、合格できるのです。
ちなみに、慶應義塾大学は帰国生入試ではなく、一般枠にて「総合政策学部」と「環境情報学部」を受験しています。いずれも偏差値70を超す人気の学部ですが、これらの学部も外国語と小論文のみで受験が可能。まさに補習校の子ども達の強みを生かして合格した例だといえます。
海外で生まれ育っていなければ、東大合格は成しえなかった
彼らの強みは言語だけではありません。最大の強みは、海外生活で培われたマインドや考え方でしょう。生まれた時から複数の言語や文化の中で生活することが人間形成に与える影響は、非常に大きいです。私にとってのドイツ語は外国語ですが、彼らにとっては、ドイツ語も日本語も母語だったり母国語だったり。これは、第3言語を学ぶ時の壁を低くするし、外国人や外国の文化に触れた時の壁もとっぱらってくれます。物事に対する考え方も柔軟で、多様であることを当たり前と捉えているのです。他人を認め自己を受け入れているからこそ、大学入試の面接において、他の人とは異なる自分を堂々とアピールすることができたのでしょう……と私は考えています。
最後に、長男に大学に合格した理由を聞いてみると、
合格するための考え方を徹底的に追求し分析した。
自分をどれだけ差別化できるか、その差別化した上でどう戦うのかを考えた。
とのこと。う~ん、少し私の期待していた答えとは違うが、ドイツに生まれ育ち、補習校からでなければ、長男は東大に行くことはなかっただろう……と母は思う。(息子よ、ごめん!)
海外生まれ海外育ちなのだから、「東大合格なんて無理」ではありません!海外生まれ海外育ちだからこそ、東大に合格できたのです。